「ハラールメニューをもらえますか」。JR佐野駅前の「日光軒」で、スカーフのような布で髪を覆った女性が頼むと、マレーシア人の店員、モハメド・アリフさん(27)がすかさずマレー語で「ラーメンもギョーザも安心でおいしいですよ」と勧める。
日光軒は、豚肉を使わないなどイスラム教の戒律に沿ったハラール(アラビア語で「許されたもの」の意味)のラーメンやギョーザを提供する。オーナーの五箇大也(ごかだいなり)さん(46)のもう一つの顔が、同市を中心に13の団体と個人がムスリム流のもてなしを広げる「両毛ムスリムインバウンド推進協議会」代表だ。
同市では、市内や隣接する栃木市の自動車工場などに通う外国人労働者が2012年ごろから増えてきた。17年末現在、人口の約2%に当たる2571人の外国人が定住。バングラデシュやインドネシアなどイスラム圏の出身者も増えている。パキスタンなどで人気の野球に似た球技「クリケット」の日本協会事務局も09年に市内に移転して国際大会を開き、知名度アップに貢献している。
ムスリムと地域住民の交流イベントなどを開くため、五箇さんらは15年に協議会を設立。ハラール食品を扱う飲食店や食料品店は市内約10店に増え、昨年7月にはモスク「佐野マスジド」が完成した。
「日本人と異なる文化や宗教、言葉を持つだけに、来てもらってからのフォローも大事」(五箇さん)とソフト面の整備も進める。今年3月には、観光スポットに加えてモスクやハラール食品を扱う飲食店を網羅した英語の観光マップを作製。5月にはアリフさんらが、英語▽インドネシア語▽ウルドゥー語▽マレー語--の4言語と日本語で、体の部位や「熱がある」といった症状を書いた指さし問診シートを手作りし、市内の病院などに配った。該当する記述を指でさせば医師や看護師に症状を伝えられ、「安心して病院に行ける」と市内のマレーシア人らに好評だ。
努力が実を結び、今年9月にはマレーシアの大学生25人が1泊2日のホームステイに訪れ、草の根の交流も進む見通しだ。五箇さんは「観光客や定住者が増えれば、少子高齢化が進む佐野も元気になる。おもてなしの精神を武器にムスリムを呼び込みたい」と話している。

